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MRI診断とがん治療を同時にできる造影剤 東工大×QSTが開発 単一高分子の「自己折りたたみ」に基づく

東京工業大学の三浦裕准教授らの研究チームは1日、量子科学技術研究開発機構(QST)などと共同で、がんの高精度MRI診断と中性子捕捉がん治療を同時に実施できる新規高分子MRI造影剤を開発したと発表した。診断と治療が同時に行える「セラノスティクス薬剤」への展開も期待されている。

研究では、親水性部位と疎水性部位からなる新規高分子の精密合成によって、1本の高分子が水中で自発的に折りたたまれる現象「自己折りたたみ」を誘起させ、ナノ粒子化に成功した。この粒子は高分子の10ナノメートル以下で、既存の多くのナノ粒子よりも極めて小さく、すい臓がんなど難治性が高いがんへの集積が期待できる。

また、折りたたまれた高分子鎖中にMRIの造影分子を封じ込めることで緩和能が向上し、少ない投与量でもがんを検出できる優れた造影効果を維持することも実証。さらに、マウスを用いた実験により、本研究で開発された薬剤はがん選択的に高濃度に送達ができ、MRIによる高解像度な分布の可視化も可能であることを確認した。

研究グループは、「本研究成果は、新しい原理に基づく高精度のがん診断薬の創出基盤となるだけでなく、MRイメージングによるガイドを介した中性子捕捉療法の実施、すなわち1つの薬剤で診断と治療を同時に達成できるセラノスティクス薬剤への展開も期待される」としている。

開発した新規高分子造影剤(SMDC-Gd)