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脂肪滴蓄積の遺伝子を探索 東京工科大研究Gが新スクリーニング法開発 

東京工科大学の杉山友康教授らの研究グループは、がん細胞株における脂肪滴の蓄積を抑制する遺伝子を探索する「RNAi(RNA干渉)ライブラリー」を用いた新たなスクリーニング手法を開発した。脂肪滴の生成に関与するMED6遺伝子の発現を増強する化合物などへの応用につながる可能性もある。

脂肪滴は、過剰な脂質の貯蔵に加えてエネルギー代謝や細胞の恒常性を維持するために重要な細胞小器官として知られる。脂肪細胞に多くみられる一方、非脂肪細胞への過剰な脂肪滴の蓄積は非アルコール性脂肪性肝疾患やがんを誘発することが示唆されている。

研究では、人工配列を多く含むshRNAライブラリーを用いて、脂肪滴の蓄積を抑制する遺伝子を探索する新たなスクリーニング系の構築に取り組んだ。

約3000種のshRNAプラスミドを導入したヒト大腸がん細胞株(HCT116)に脂肪滴標識試薬を処理したのち、セルソーターを用いて標識試薬の蛍光強度の高い細胞を分取。これら細胞に含まれるshRNAプラスミドを抽出し、研究室で独自に開発した解析ツールを用いてshRNA配列の標的となる7種類の候補遺伝子をリストアップした。

このうち、MED6遺伝子はRNAポリメラーゼIIを介した転写に重要な役割を果たしており、同遺伝子の発現をRNA干渉法により抑制したところ、対照群と比較して脂肪滴の蓄積が増加。

また、脂肪滴の主成分である「トリグリセリド」の合成に関与する遺伝子などの発現が低下した。MED6は脂質代謝に関与する遺伝子の発現を転写レベルで制御することにより脂肪滴の蓄積を抑制することが示唆されている。

研究グループは「脂肪滴を標識する試薬以外の様々な細胞機能を検出する蛍光色素を応用することにより、人工配列を多く含むshRNAライブラリーを使用したスクリーニング戦略が期待される」とした。