京都大学の辻徹郎准教授らの研究グループは4日、温度勾配を持つ流体中に置かれたマイクロ粒子の表面付近に、光ピンセットで流れを検出するトレーサーを留めるという独自手法で熱浸透すべり流の発生を検出したと発表した。
熱浸透すべり流は、微小粒子の温度勾配方向への泳動現象である熱泳動の主要なメカニズムのひとつとされる。熱泳動は分子やコロイドなどの微小粒子の分離、濃縮、分析技術への応用が期待されており、その仕組みの理解は重要な基礎研究課題だ。だが、熱浸透すべり流が検出困難な流れであることなどが障壁となるためその評価は行われていなかった。
研究グループは、強い熱浸透すべり流を誘起するために、集光レーザーによる光熱効果を用いて流体中に強い温度勾配を形成。さらに、流れを検出するトレーサーを光ピンセットによりマイクロ粒子表面近傍の領域に留めることで、温度勾配に起因する流れの検出に成功した。これは熱から流れを作り出す技術や熱で物質を分離する技術の基盤となる成果だという。
辻准教授らは「研究成果を、微小系の流体力学における基礎的な実験技術として発展させていけると面白い」と紹介している。