京都大学の李聖林教授らの研究グループは、数理モデルを活用して蕁麻疹(じんましん)の発疹の形状を解析。その形態上の特徴を生体内の病理的メカニズムと関連付け、膨疹を5つのパターンに分類できる基準を開発した。
蕁麻疹は多様な形状の膨疹として皮膚表面で明らかに視認できるにも関わらず、それを引き起こす体内の仕組みは謎に包まれていた。そこで、こうした要素を生体内の動態に結びつけることが、患者の容態に沿った治療法を開発するために非常に重要となっている。
研究では、生体外(in vitro)の実験データを用いて血管内および血管外双方の動態を組み込んだ階層的数理モデルを構築して膨疹の形状を解析。こうした形態学的な特徴を生体内における蕁麻疹の病理的な動態と結びつけた。そして、膨疹のパターンを5種類に分類している。
また、臨床の現場で活用できる「膨疹形状の分類基準」(EGe criteria)を開発。105人の患者を対象に、この基準に従って膨疹を分類したところ、実際の慢性蕁麻疹の膨疹の形状が数理モデルで発見された5種類の形状に分類できることが、87.6%という高い値で示された。
研究グループは「数理科学と臨床皮膚科学を融合させて皮膚疾患の病態生理を解明し、難治性皮膚疾患の新たな治療戦略を開発する新たな学際的研究分野としての数理皮膚医学を切り拓き、臨床現場で実用化していきたい」と意気込んだ。