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大阪公立大×住友化学 「がん細胞自らに免疫細胞を活性化するサイトカインを作らせる」ことに成功

大阪公立大学の杉浦喜久弥教授らと住友化学㈱の研究グループは先月、液性因子「サイトカイン」の遺伝子を入れた運搬体をがん細胞に直接投与することで、がん細胞自らに免疫細胞を活性化するサイトカインを作らせることに成功した。高い治療効果を実証している。

研究では、微小カプセル「リポソーム」を成分とする運搬体を用いてサイトカイン遺伝子をがん細胞内部に運び、がん細胞にサイトカインを作らせ、がん免疫反応のみを効果的に高めることを行った。

実験ではまず、がん抗原を捕食した単球などを樹状細胞(DC)に変化させる。次に分化したDCを活性させるとともに、インターフェロンガンマなど3つのサイトカイン遺伝子をがん細胞中に送り込むことで、がん細胞にサイトカインを生成させて自らを攻撃する免疫状態を作った。

この方法では、遺伝子をがん細胞に送り込んでから少なくとも72時間はサイトカインが分泌される。そして、分泌されたサイトカインはがんの中でのみ消費されるため、全身への拡散を抑えられるという。

研究グループは「犬は人と同様にがんを自然発症し、死因の5割を占めるため安全で効果的ながん治療法を開発することは、獣医学において特に重要な課題」と説明。「犬のがん治療で効果を得ることができれば、人のがん治療にも重要な情報を提供できると考えられる」としている。