名古屋大学の伊藤英人准教授らは30日、効率的かつ迅速な「パラジウム触媒を用いた含七員環ナノカーボンの合成法」の開発に成功した。含七員環ナノカーボン合成の新しい指針となることが予想されている。
グラフェンなどの六員環(ベンゼン)骨格の炭素材料では、非六員環(五・七・八員環)に起因した非六員環ナノカーボンが存在。さまざまな物理的性質を示すことが知られているが、「含七員環ナノカーボン」の効率的な合成法は限られていた。
研究では、パラジウム触媒を用いた炭素-水素結合活性化反応を伴うカップリング反応により、含七員環ナノカーボンの効率的な新規合成法を実現した。この方法では、ブロモ基をもつ芳香環連結分子を原料として、さまざまな骨格をもつ幅広い含七員環ナノカーボンのみならず、ヘテロ原子を含む多環芳香族炭化水素を良好な収率で得ることに成功している。
また、ロジウム触媒およびパラジウム触媒を組み合わせた逐次的な反応によって、入手容易な原料からおのおの2つの六員環と七員環を一挙に構築でき、これまでにない複雑な骨格をもつナノカーボンの合成も可能とった。量子化学計算によって詳細な触媒反応機構が明らかとなり、七員環合成法の有用性が確認されている。
さらに、合成された含七員環ナノカーボンは、湾曲した骨格により幅広い有機溶媒への高い溶解性を示すと同時に、固体凝集状態で強まる発光特性などのユニークな性質を有していることが判明している。
研究グループは「このような特性は構造有機化学、および有機EL材料や分子デバイスなどの材料科学の分野への応用が期待される」としている。