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AIと人の連携で次世代エネルギー製造の低コスト化に貢献 NIMSが新たな手法を開発

物質・材料研究機構(NIMS)は先月末、望んだ特性を持つ材料をAIと人との連携により短期間で発見する手法を開発したと発表。この方法は水の電解装置に必須とされてきた白金族元素を用いない新規電極材料の発見を導き、次世代エネルギーであるエコな水素の製造の低コスト化と大規模導入を加速することとしている。

現在、酸素発生反応(OER)電極触媒の低コスト化・大規模化対応に際し、白金族元素を用いない多元系材料が注目を集めている。複数の元素を混ぜ合わせることで思わぬ材料の高特性化が稀に起こるためだ。だが、元素の組合せや化学組成は無限にあり、研究のために膨大なコスト、時間、人的資源が必要となっている。

NIMS研究チームはデータ数によって予測する手法を変化させて進化することで、所望の特性を示す材料を正確に予測するAIを開発。このAIと人が連携することで、全候補材料を網羅的に探索すると6年かかる候補から、たった1カ月でOER電極触媒材料に適した新規材料を発見した。

発見された電極触媒材料は、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)という比較的安価かつ豊富な元素で合成する。そして当該材料は、条件によってはこれまでのOER電極触媒材料の中で最もOER活性が高いルテニウム(Ru)酸化物を超える電気化学特性を有していた。

研究グループは「今後、水電解向け電極材料開発を筆頭に、様々な電気化学デバイスの高効率化を実現する新材料開発を、本研究の成果であるAIと人との連携で加速し、カーボンニュートラル実現のための実用技術開発につなげる」と力を込めた。