産業技術総合研究所(産総研)の中村彰良主任研究員らのグループは先月末、TOPPAN㈱、㈱インプランタイノベーションズと共同で新たなゲノム編集ツール「AalCas9」を開発して特許登録を受けた。
既存のゲノム編集ツール「SpyCas9」を改変する試みは、PAM配列の制約をなくすためには有効であり、すでに多くの報告がされている。一方で、それらの改変型SpyCas9では、相応の副作用もでている。
このような課題に対して3者のグループは、「SpyCas9」を改変するのではなく、別の生物の「Cas9」を同定することで、ゲノム配列上の「5ʼ-NGG-3ʼ」以外のPAM配列を用いて、ゲノム編集可能なツール開発に取り組んだ。
研究グループは、AalCas9が5ʼ-NNACG-3ʼをPAM配列として認識することと、ゲノムにコードされた野生型よりも短い配列にした人工型のガイドRNAが高活性であることを見いだし、ゲノム編集ツールとして利用可能な技術にした。
特に、5ʼ-NNACG-3ʼは既存のゲノム編集ツールのPAM配列とは異なり、AalCas9によって特異的にゲノム編集できる遺伝子が動植物を問わず存在する。また、植物「シロイヌナズナ」の細胞を用いた実験において、AalCas9が既存のゲノム編集ツールよりも高いゲノム編集活性を示す条件があった。
3者は「AalCas9をゲノム編集の基盤的技術として、生命科学や医学だけでなく、農業や工業など広く事業に展開していく」としている。