理化学研究所(理研)の髙橋苑子研究員らの共同研究グループは29日、皮膚炎に伴うかゆみの伝達に感覚神経における遺伝子発現を調節する転写因子「STAT3」の活性化が重要な役割を果たしていると発見した。11月28日付の科学雑誌「セルリポーツ」で報告されている。
たんぱく質群「IL-31」が作用することで、別のかゆみ誘導物質が生まれてかゆみが誘導されるという報告が先行研究であった。だが、どのような分子が働くことでかゆみを誘導しているかは明らかでなかった。
そこで共同研究グループは、IL-31の感覚神経と角化細胞のどちらへの作用が、かゆみを誘導しているかを明らかにし、IL-31 受容体の発現メカニズムやIL-31受容体下流のかゆみ誘導メカニズムを解明することを目指した。
その結果、IL-31が感覚神経に発現する受容体に作用することで、かゆみを引き起こしていることを実証。また、IL-31受容体の下流で、転写因子STAT3が活性化されることが、かゆみ誘導に重要であることを示した。
さらに、感覚神経のSTAT3は、実はIL-31受容体の発現や、かゆみ伝達に関わる神経ペプチドの発現にも重要であることも見いだしました。感覚神経のSTAT3は、IL―31依存的なかゆみだけでなく、IL-31非依存的な炎症性のかゆみにも重要であることも示唆している。
研究グループは「感覚神経の細胞体が存在する神経節へ抗体を効率的に送達することができるようになれば、より少ない投与量でかゆみを抑えられるかもしれない」としている。