東北大学の石井琢郎助教やカナダ・ウォータールー大学の研究グループは、ハイフレーム超音波撮像技術を用いて、排尿中の尿道内の流路変形と内部の流れベクトル分布を1秒当たり1000枚以上の高時間分解能で計測するイメージングシステムを開発した。前立腺肥大症などにより変性した尿道内部における流れの可視化を初めて実現したと28日に発表した。
これまで、尿道内腔状態が尿の排出にどのような影響を与えているのかを評価する手段は存在しなかった。この研究は、尿道内における排尿流を詳細に可視化する技術を開発し、排尿症状を有する尿道内においてどのような流れが生じているのか明らかにすることを目的とした。
研究では石井教授らが経直腸超音波イメージングシステムを新たに開発。このシステムは、ハイフレームレート超音波撮像法という技術に基づき、臓器の断層画像「B-mode 動画」と流れと速さの空間分布を表す「流れベクトル動画」を1250画像/秒という高いフレームレートで同時に取得することができる。
これらの画像を合成し可視化する事で、排尿中の尿道において、いつ、どこで、どのような流れが生じているか尿道の臓器運動と尿の流れの時間と空間変動を明らかにすることを目指した。
特に排尿終了期では、外尿道括約筋の運動によって、尿道の収縮が出口側から膀胱測に伝搬し、この運動によって尿が膀胱側に飲み込まれるように逆流していることが明らかになった。この収縮伝搬は約100ミリ秒という短時間の現象であり、本システムが有する高ハイフレームレート撮像によって詳細な運動の解析が初めて可能とした。
加えて、排尿症状を有する被験者の中でも特に尿道内に狭窄を有する場合は、尿道内に渦流やジェット流が生じていることも明らかになっている。
石井助教は「この技術によって得られるデータを応用し、尿道内流れの解析に基づいて排尿症状の要因となっている尿道の部位や因子を予測することで、患者個別に最適な薬剤選択、より低侵襲な外科治療などに向けての重要な医療支援技術としての展開を目指します」と語った。