日本原子力研究開発機構(JAEA)など5機関からなる研究グループは1日、水溶液の凍結時に氷結晶間に生じるナノ空間内で、セルロースの結晶相転移が起きることを発見した。さらに、その構造変化を利用することで、天然構造を持つセルロースを原料にして高強度セルロース多孔質ゲル材料を実現した。この成果は国際学術誌のオンライン版に1日付で公開された。
研究チームは天然状態である水酸基のみを持つセルロースナノファイバーを原料にして、省エネルギーかつ簡易な方法で材料化することを目指した。天然構造を持つセルロースを原料にして多孔質ゲル材料ができれば、セルロース利用の飛躍的な広がりが期待できる。
研究チームはセルロース多孔質ゲル材料の作製に成功した。それは、応用性の高い、いくつかの性質を持つことが分かった。
まず、セルロースナノファイバーと水酸化ナトリウムの混合物に活性炭やゼオライトなどの粉末体を混ぜ合わせ、凍らせて、クエン酸を加えて溶かす。セルロース骨格に粉末体を安定に保持したゲル材料ができ、セルロースの自重の3倍ほどの粉末体を保持することが可能であった。
粉末体を含んでも強い圧縮復元性や強度はほぼ変わらない。そのため、さまざまな粉末体を保持したセルロース多孔質ゲル材料に水やガスを流し、骨格部分で金属イオンや二酸化炭素などを吸着して回収するような材料にも応用可能であることが示された。
研究チームは「有害物質の吸着剤や医療材料への応用が期待される」とし、「セルロース分子の表面を利用した二酸化炭素回収材としての応用もできうる」と説明している。