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上智大など3大学が富岳の活用で物質依存性などを解明 新たな物理への展開が期待

上智大学など3大学の研究グループは29日、スーパーコンピューター「富岳」の活用で第一原理計算手法や機械学習の援用、銅酸化物高温超電導の物質依存性などを解明できると示した。新しい物理への展開が期待されるとしている。

研究グループは銅酸化物に対して導いてあった第一原理計算に基づく任意パラメタのない有効ハミルトニアンから出発した。ハミルトニアンは物性を決定する多体電子の支配方程式を与え、磁性や超電導をはじめとする現象の予測を可能とする。

このハミルトニアンに対して機械学習手法を組み込んだ最先端の量子多体計算法と独自開発した計算コードを使い、富岳や東大物性研究所スーパーコンピューターを活用した大規模計算をもとに、実験結果を再現する結果を得て4種の物質の依存性や差異と共通性を明らかにした。

この結果、超電導の強さの大きさを制御する主要因子を突き止めるとともに、最適超電導転移温度を与える公式も提唱して調べた4つの物質すべてでよく満たされていることも示した。

このように現実の銅酸化物の依存性をよく再現することから、一連の解析が精度の高いものであることが示され、超伝導の仕組みを現実物質に即して理解できる可能性が拓けたことになる。

現実物質をあらわすパラメタから離れてその周りのパラメタ探索を行うことによって、現実の銅酸化物でクーパー対を作るのに必要な電子管の有効引力がどのように生じているかの理解が深まり真空中や通常の金属中の電子とは顕著に異なる電子集団の特徴に関する知見も得られた。

このように長年の難題であった銅酸化高温超伝導の物質依存性や現実物質に即した超伝導機構も第一原理計算手法、機械学習の援用も富岳によって解明できることが示された。

研究グループは今後について「分数化は超電導機構に概念的に新しい視点を導入する物であり、その実態についての考察やほかの多くの実験データの整合性や検証から新しい物理への展開が期待される」としている。