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耐性変異を獲得したたんぱく質の不可逆阻害 京大研究Gが初成功 創薬で高い戦略

京都大学の浜地格教授らの研究グループは、たんぱく質不可逆阻害のための新たな反応基を開発。これが薬剤耐性変異を獲得したたんぱく質の機能阻害に有効であることを初めて実証した。薬剤耐性たんぱく質に対する新規治療薬開発のための高い戦略として創薬研究を加速させる可能性がある。

「標的たんぱく質に1度くっついたら離れない」不可逆阻害剤は強力な薬効が期待できるため近年の創薬研究で大きく注目されている。だが、現在臨床で用いられる阻害剤の多くはたんぱく質中のアミノ酸であるシステイン残基としか反応しない。システインが別のものに変異した場合は効果がなくなるという課題があった。

研究グループは、N-アシル-N-アリールスルホンアミド(ArNASA)基がリジン残基と反応可能であり、なおかつ血清含有培地などの生理的環境においても高い安定性を示すことを見いだした。この反応特性を活用して薬剤耐性変異を有するプルトン型チロシンキナーゼに対する世界初の阻害剤開発に成功している。

グループの一員である同大学院生の河野正晴氏は「この成果によってリジン標的型反応基の選択肢が大きく広がったと同時に、生物個体への応用にも大きく近づいた」と述べている。

開発した ArNASA 反応基の構造とタンパク質
不可逆阻害のスキーム