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難病「多発性嚢胞腎」治療薬候補の物質 京大研究チームが作製に成功

京都大学の長船健二教授らの研究グループは、難病「多発性嚢胞腎(のうほうじん)」の病態モデルを作成することに成功した。これを使って治療薬候補の物質を見い出している。米国科学雑誌「セルリポーツ」で今月1日に発表された。

多発性嚢胞腎は腎臓に水がたまった袋が多数形成され、腎臓の機能が低下してしまう難病だ。中でも、常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD)は主に集合管から嚢胞ができたが、この症状をヒト細胞で再現したモデルはなかった。

研究では集合管を形成する前駆体である尿管芽を利用。ヒトiPSから作成した尿管芽細胞の拡大培養を行い、集合管オルガノイドの発生段階を進めることに成功した。また、ゲノム編集によりPKD1遺伝子を働かない状態にしたヒトiPS細胞を作製し、嚢胞作成の開始メカニズムを明らかにした。

さらに、嚢胞作成を抑制する薬剤候補として、レチノン酸受容体(RAR)作動薬を見つけることに成功。その効果をADPKDマウスモデルで確認した。

研究グループは「RAR作動薬の中でも白血病治療で用いられるATRAを使ってマウスのADPKDモデルで嚢胞形成と腎機能憎悪を抑制する効果が確認された」と報告している。