鳥取大学の松浦和則教授らの研究グループは21日、人工ペプチドと脂質からなる「エンベロープ型ウイルスレプリカ」が巨大単層リポソーム(GUV)や細胞に「膜融合」を介して侵入する超分子システムを人工的に創ることに世界で初めて成功したと発表した。
「膜融合」は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)やインフルエンザウイルスのような「エンベロープ型ウイルス」が宿主細胞に侵入するために不可欠な段階。だが、これまでにエンベロープ型ウイルスと宿主細胞の膜融合を研究するための人工的なモデル系はなかった。
研究では、ウイルス由来ペプチドと脂質膜の複合体であるエンベロープ型ウイルスレプリカが、静電相互作用による接着の後に膜融合によりGUVや細胞内に侵入することを実験的に示した。
研究グループは「成果で確立した超分子モデル系は、天然のエンベロープ型ウイルスの感染時における膜融合などの細胞侵入メカニズムを解析する上で重要なツールとなる」としている。