東京工業大学の八島正知教授らは、従来とは全く異なる材料設計戦略により中低温域で世界最高のプロトン伝導度を示す新物質「BaSc0.8Mo0.2O2.8」を発見した。さらに結晶構造解析と理論計算から、新物質の高プロトン伝導度の要因を明らかにしている。
八島教授らは、3次元的に不規則化した本質的な酸素空孔を持つペロブスカイトにドナードーピングを行うという従来の戦略とは異なる材料設計戦略により、中低温域で高プロトン伝導を示す新物質BaSc0.8Mo0.2O2.8を発見した。
さらに、中性子回折データを用いた結晶構造解析と第一原理分子動力学シミュレーションにより、この物質の高いプロトン伝導度の要因は、「プロトントラッピング軽減による低い活性化エネルギー」「高いSc濃度」「高いプロトン濃度」「3次元のプロトン拡散にある」ことを明らかにしている。
研究グループは「本研究の成果には、新しいクリーンエネルギー技術と持続可能な社会の実現に貢献し、環境問題を解決するという社会的インパクトがある」としている。