名古屋大学のパクヒョンギ特任助教らの研究グループは21日、新型コロナウイルスの進化が潜伏期間や無症候率などの臨床的な症状や人の行動と複雑に関連していた可能性を明らかにした。
研究によると、武漢、アルファ、デルタ、オミクロン株に感染した計274人の臨床データを順番に解析していくと、変異株の出現に伴い生体内におけるウイルス排出量のピークは増加。ウイルスの増殖速度が早まる傾向に進化する様子が見られた。
研究グループは、AI技術を組み込んだシミュレータを開発。詳細に分析した結果、この進化の傾向は、変異株の出現に応じて人が感染症から身を守るための行動を克服するウイルスの生存戦略として成立したものである可能性が示された。
また、変異株の出現とともに短くなった潜伏期間や高くなった無症候率も変異株を進化させる選択と密接に関連していることが判明している。
研究グループは「研究の成果およびAI技術を組み込んだシミュレータは、将来のウイルス進化を予測し、ポストコロナ時代の感染症対策を確立する上で重要な一歩となることが期待される」とした。