京都大学の岡田遥平研究員らの研究グループは、時間依存性傾向スコアとリスクセットマッチングという統計手法を用いて心肺蘇生法(CPR)開始までの時間を考慮した解析を実施。院外心停止患者に対する模型人工肺(ECPR)と予後との関連を検証した。ECPRの潜在的有効性を示した。
研究では日本救急医学会多施設共同院外心停止レジストリ(JAAM-OHCAレジストリ)を用いて、全国の成人の院外心停止患者を対象にした。対象患者を除細動の適応となる波形(心室細動など)の患者と除細動の適応とならない波形の患者に分け、ECPR治療が行われた患者(ECPR群)と行われなかった患者(対照群)を対応した患者のセットとして、患者の背景因子などをそろえて解析した。
1826例の除細動適応波形の患者及び除細動が適応外の740例の患者を解析すると、ECPR群における生存のオッズ比は、除細動適応患者では1.76、除細動の適応外の患者では5.37で対照群と比較して増加していた。
良好な神経学的転帰に関しては、ECPR群におけるオッズ比は、除細動適応波形の患者では1.11、除細動の適応外の患者では4.25であった。
岡田研究員は「今回の研究では、全国の院外心停止のデータを用いてECPRが患者の生存に寄与する可能性が示された」と説明。「この結果がECPRを蘇生戦略の議論の材料となり、患者の救命、社会復帰に資する」としている。