東京理科大学などの研究グループは、粉末X線回折パターンの解析において、深層学習を利用して相同定プロセスを容易にすると同時に、目的の結晶構造をもつ新規相を検出できる新たな手法を開発した。Al-Si-Ru合金系での準結晶の発見の報告はこの研究が初めてだという。
粉末X線回折は結晶性物質の同定や構造の解明に欠かせない汎用性の高い分析手法。しかし、実際に得られる回折パターンは複雑であることが多く、正確に解析するためには熟練者の知識と経験が必要となることが課題の1つであった。
そこで研究グループは、深層学習を活用した新たな粉末X線回折パターンの解析法を開発。新規相を発見する手法としての妥当性の評価を行った。専門家でも存在を区別が難しいとされる多相混合物中での準結晶相の検出を目的として研究を進めた。
研究では、人工的に作製した多相混合物の回折パターンで深層ニューラルネットワークを学習することで、実際の回折パターンから約9割以上の精度で準結晶の存在を判定することが可能となる。
学習済みの分類器を使用して、実際の粉末X線構造解析で得た440個の回折パターンをスクリーニングし、そこからAl₄₃Si₃₂Ru₂₅やAl₄₄Si₃₁Ru₂₅の組成を有する準結晶相を識別することができた。
研究グループは「これは多相試料の相同定プロセスを大幅に加速する可能性を示す重要な成果であり、材料学分野において大きなブレークスルーをもたらすものと確信している」とコメントした。