広島大学の中里亮太助教らの研究グループは16日、細胞のせん毛の長さが時計遺伝子により制御され24時間周期で伸縮することを発見したと発表した。夜に負った傷が治りにくいメカニズムの一端である可能性を示唆している。研究成果は欧州の科学誌で公表された。
■「せん毛の長さ」昼に比べて夜に長い
研究グループは培養細胞の実験から時計遺伝子の合成と分解が24時間周期で行われているマウスの皮膚にある線維芽細胞では、せん毛の長さも24時間周期で伸縮することを発見した。また、マウス実験から脳を構成する神経細胞やグリア細胞のせん毛の長さは昼に比べ夜に長いことが分かった。
細胞が傷ついた部位へ移動する速度を測定したところ、せん毛の長さが長いほど移動速度が低下することが分かった。
こうした結果からせん毛の長さは体内時計で制御され、創傷治癒のカギとなる線維芽細胞はせん毛の長さに依存して傷への移動速度が変わることを突き止めた。
研究グループは「昼に負った傷と夜に負った傷では治癒までに時間が異なる現象に、研究で発券したせん毛が関与すると考えられる」と推測。「今後の解析で生命現象においてどのような役割を担うのかが明らかになると期待している」とした。