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必須遺伝子が染色体になくても生物は絶滅しない 東大などの共同研究チームが定説否定

東京大学の按田瑞恵特任助教らや理化学研究所などの共同研究チームは、多様な環境に生息するバクテリアを研究。生物のたんぱく質の合成に必須な「リボソームRNA(rRNA)遺伝子」を染色体以外の小さいDNA分子「プラスミド」だけに持つことを発見した。生物学では、生存に必須な遺伝子を長期間にわたって子孫に伝えるためには最大のDNA分子である染色体上で受け渡す必要があるとされてきたが、今回の研究成果は、これまでの定説を否定するもの。必須遺伝子が染色体に無くても生物は絶滅しないことを明らかにした。

これまでの研究でバクテリアは染色体上にrRNA遺伝子を持たないことが明らかになっていた。だが、こうした現象が特定のバクテリアに限られているのか、一時的なものなのかは判明していなかった。

研究では染色体に由来するDNA配列とプラスミドに由来するDNA配列の見分けがつかない状態で混ざった9万個のデータを解析。みつかったバクテリアはrRNA遺伝子がプラスミドだけに存在するのかを確かめるため、得られた候補と近縁種をほぼ完全なゲノム配列で決定した。

その結果、多様な環境で生息するバクテリアで少なくとも4回、独立した染色体からrRNA遺伝子が失われたことが明らかになった。

染色体からrRNA遺伝子が失われた時期にゲノムにどのような変化が起きたかを調査した。その結果、たんぱく質「Rep_3」の獲得だけが4回のイベントで共通して起きていた。染色体からのrRNA遺伝子の喪失には、Rep_3をコードとする遺伝子を獲得したころにあると推測される。

研究グループは「生存に必須な遺伝子を長期間にわたって安定して子孫に伝えるためには染色体上で受け渡す必要があるとする生物学における定説を否定するもの」と説明。「ゲノムに関する教科書レベルの理解をさらにアップデートする必要がある」としている。