京都大学の青木一成助教らの研究グループは、T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL細胞)が骨髄内に留まり増殖する分子メカニズムとして、遺伝子発現の制御に関わるクロマチンリモデリング因子「cBAF複合体」が重要な役割を担っていることを明らかにした。
急性白血病と呼ばれる血液腫瘍のうち、成人では約5%、小児では約10-15%がT-ALL細胞に分類される。その中には、治療が奏功しない患者もおり新しい治療法が求められている。そのためにはT-ALLの分析がかかせない。
研究によるとcBAF複合体は、そのクロマチンリモデリング活性によりがん原性転写因子である「RUNX1」の標的遺伝子への結合を促進しており、白血病細胞の増殖に対し正に関与していた。
一方、cBAF複合体のクロマチンリモデリング活性を阻害する薬剤はRUNX1のゲノム DNAからの乖離と増殖抑制を誘導すること、白血病マウスモデルにおいても増殖抑制効果を示すことを確認した。
研究グループは今後について「cBAFはほぼどの細胞でも発現していることから他のがん種においても同様に機能していると考えられ、更に解析を進めることでcBAF阻害が幅広いがん種の治療法となる可能性がある」とコメントしている。