九州⼤学の徳永信教授らの研究グループは、コバルト酸化物を触媒として⽤いることで、アルケン、単体硫⻩、⽔素と、シンプルで安価な原料からジアルキルポリスルファン類を効率的に合成することに成功した。今後、環境にやさしい新たな合成法につながる可能性もある。
ジアルキルポリスルファン類はアルケンや単体硫⻩に加え、還元剤として硫化⽔素を原料とする触媒的合成法で製造されている。だが、この硫化⽔素は強い毒性をもつため、⼊⼿経路が限られる上に⾼い管理コストが必要となるなどの問題があった。
研究では無溶媒条件において、コバルト酸化物触媒存在下、単体硫⻩、⽔素加圧下(3–5 MPa)でジイソブテン(DIB)と作⽤させることにより、対応するジアルキルポリスルファン類を⾼収率で得ることに成功した。反応後に⽣成物と触媒は容易に分離回収が可能で、回収⽣成物は現⾏法の製品とほぼ同等の性能を⽰している。回収触媒は何度も再利⽤することが可能とされている。
つまり、従来の⼯業的製造法において還元剤として利⽤されてきた硫化⽔素に代わって、毒性が無く、安価な⽔素ガスを活⽤し、効率的にジアルキルポリスルファン類の合成が可能であることが分かっている。
研究グループは「今回の単体硫⻩と⽔素ガスを組み合わせた合成法は、これら既存の、異なる還元剤を利⽤した硫⻩化合物の合成に適⽤することで環境にやさしい新たな硫⻩化合物合成法を⽣み出す可能性がある」とコメントしている。