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糖尿病の薬で持久力を増加 九大研究Gが発見、高齢者の筋力低下の治療に貢献

九州大学の小川佳宏主幹教授らの研究グループは10日、肥満・糖尿病マウスに糖尿病の薬である「SGLT2阻害薬カナグリフロジン」を投与すると、走行距離が約5倍に伸びることなどを発見したと発表している。この発見は高齢者の筋力低下に対する新たな治療標的につながる可能性もあるという。

加齢などによる筋力の低下は「サルコペニア」と呼ばれ、転倒や骨折や寝たきりのリスクを増加させる。この有効な治療法がないため、高齢化社会の日本においてサルコペニアの治療法の開発は喫緊の課題だ。糖尿病がリスクを増加させると知られているが、治療薬が骨格筋機能に与える影響についてはほとんど検討されていなかった。

そこで研究グループは肥満糖尿病マウスにSGLT2阻害薬を投与して骨格筋機能に対する効果を調べた。

マウスにSGLT2を4週間投与したところ骨格筋量は減少せず、握力も変化しなかった。一方で持久力は、投与していないマウスと比較してトレッドミル走行距離が約5倍に増加していた。

さらに、持久運動に重要なヒラメ筋などを比べた。その結果、SGLT2阻害薬により複数の代謝物が変化していましたが、脂肪酸を酸化させて燃料センサーAMPKを活性化させる「AICARP」と呼ばれる代謝物はヒラメ筋でのみ増加していることが判明した。

ヒラメ筋を解析したところ、AICARPの増加と一致してAMPKが活性化し、脂肪酸の酸化を高めていることが分かった。マウスの持久力の改善につながった可能性がある。

研究グループは「骨格筋内のエネルギー産生を促す代謝物であるAICARP増加のメカニズムの解明は、骨格筋の機能低下を改善させてサルコペニアに対する新たな治療標的になる可能性がある」と指摘している。