名古屋大学の佐々木武馬助教らの研究グループは、九州大学などとの共同研究により陸上植物の水の通り道を形づくるたんぱく質「MAP70-5」を発見した。このたんぱく質があることで適切な壁孔が作られているという。
植物の細胞を覆う細胞壁は、細胞の形の維持に加え、水分・養分などの輸送も担う。細胞壁の微小な穴(壁孔)を含め、植物の細胞壁の立体構造を決定する仕組みはほとんど明らかになっていない。
研究グループの実験では、MAP70-5を生産することができなくなった変異体は斜めにゆがんだ異常な構造の壁孔を作ったという。
また、MAP70-5を道管ではない葉の表皮細胞に発現させると、微小管が湾曲してリング構造を作る様子が観察された。試験管内で合成した MAP70-5を細胞外で微小管に反応させたところ、微小管が曲がりやすくなることを発見している。
これらの結果から、MAP70-5が微小管の物性に作用することで、壁孔の縁に沿う湾曲した微小管を維持しており、これにより壁孔をふち取る細胞壁が正しい方向に形成されることが明らかとなった。
研究グループは「研究成果を利用して植物の細胞壁構造を改変することで、将来的な植物細胞の形態や機能、植物個体の性質や形態を人為的に制御する技術、利用しやすい木質バイオマスの生産技術にも繋がる可能性が考えられる」としている。