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「100年の謎」に東京女大研究Gが挑戦 難解な微分方程式の2形式の計算法を確立

「太鼓の音から太鼓の形状の何が決まるのか?」―。物体が振動する時の音から物体自身の形状を推定するという逆問題はスペクトル幾何学の基礎問題として、100年以上多くの研究者を惹きつけてきた。太鼓の音(固有振動数)と太鼓の形状の関係は数学的にはラプラス作用素の固有値問題という偏微分方程式によって表現される。ラプラス作用素の固有値と領域の形状の関係を解析するためには形状微分と呼ばれる「固有値問題の領域変数に関する微分値」の具体的な値を計算することが重要となる。20 世紀初頭から形状微分に対する理論的な解析が行われてきましたが、厳密な計算法の確立には至っていなかった。

こうした〝100年の謎〟に挑戦したのは、東京女子大学の劉雪峰教授と新潟大学の研究グループ。固有関数の誤差評価に関する最新理論を利用して微分法定式における形状「多角形領域におけるディリクレ境界条件」と「非斉次ノイマン境界条件の形状微分」の計算法を確立した。

研究では三角形領域に対する第1固有値の形状最適化問題に対して、ディリクレ境界条件だけでなく非斉次ノイマン境界条件といった複雑な境界条件をもつ問題にも対応可能な検証法を開発した。

研究により一定の直径をもつ三角形のうち正三角形が最初のラプラス作用素の第1固有値を最小化することが2つの境界条件(ディリクレ、非斉次ノイマン境界条件)のもと証明された。

研究グループは「潰れた領域やなめらかな境界をもつ領域において形状微分を厳密評価し、2階形状微分の具体的な値の厳密評価を可能にすることで、固有値に関する領域の形状最適化問題だけでなく、領域の形状決定問題『太鼓の形を聴く』の計算機援用証明に取り組んでいきたい」としている。