京都大学の掛谷秀昭教授らの研究グループは、抗がん剤の分子標的である「アスパラギン合成酵素(ASNS)」を阻害する微生物代謝産物ビサボスクアールA(Bis A)を見いだし、非小細胞肺がんに対する抗がん剤シーズとしての有望性を明らかにした。新たな抗がん剤の開発が期待されている。
アスパラギン合成酵素(ASNS)は、L-グルタミン(L-Gln)を窒素源として、L-アスパラギン酸(L-Asp)から L-アスパラギン(L-Asn)を生合成する酵素。
ASNSはがんの悪性化や再発、薬剤耐性に寄与する分子標的として注目されている。だが、既存のASNS阻害剤は低い細胞膜透過性や化学構造の多様性の少なさなどの問題を抱えている。
研究グループは、新規ファーマコホアを有するBis Aを単剤処理あるいはほかの薬と併用することで、抗がん活性を示すことを明らかにした。がん代謝特性を標的とする新規抗がん剤開発につながることが期待されている。
研究グループは「Bis AとL-アスパラギナーゼやmTORC1阻害剤との併用効果は、今後のASNS阻害剤を用いたがん化学療法に福音をもたらすことが期待される」と説明している。