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生成中のRNAは核小体の内部構造を制御する「界面活性剤」 北大研究Gが明らかに

北海道大学の山本哲也特任准教授らの研究グループは9日、核小体のサブコンパートメントである繊維状中心の大きさは、転写の間に生成される新生リボソームRNAが発生する表面圧によって制御されることを、ソフトマター物理学と分子生物学の融合研究によって明らかにした。

核小体は、タンパク質の合成に必要なRNA-タンパク質複合体であるリボソームを生成する核内構造体。核小体は一様な液滴ではなく、複数のサブコンパートメントが分散した海島型の多相構造を形成する。

これまでの研究では、核小体の多相構造も「液液相分離」によって形成されていると考えられてきた。液液相分離は、ドレッシングを放っておくと、水と油の領域に分離するのと同じ現象だ。

液液相分離で形成された液滴は、時間が経つと融合する性質があるが、これは複数のサブコンパートメントが分散しているということと矛盾する。リボソームRNAを生成するプロセスである「転写」を抑制すると、液液相分離によって形成された液滴のようにサブコンパートメントが融合することから、転写が海島構造を安定化する原因であると考えられる。

リボソームRNAの転写は、サブコンパートメントの表面で起きることが知られる。

本研究では、生成途中のリボソームRNAがサブコンパートメントの表面に局在化されていることに注目。サブコンパートメントの大きさを解析するための理論モデルを構築した。この理論を解析することによって、毎分生成されるリボソームRNAの数を大きくすると、安定なサブコンパートメントの半径が大きくなり数も増加した。

さらに、生成されるリボソームRNAの生成数を薬剤添加によって変化させたところ、構築した理論と定量的に一致する結果を得た。