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細胞活動を解析する新手法 東北大准教授らが睡眠不足による神経活動変化を検証

東北大学の佐藤亜希子准教授らは、マウスを用いて脳内の細胞活動変化を網羅的に解析する新たな方法を提案しました。この方法を用いることで、一時的な睡眠不足による脳内の神経活動変化と領域間の結合性変化を定量的に検出できることを示した。脳を丸ごと使う必要がないため、動物愛護の観点からも有用な実験手法となりそうだ。

研究では、活性化した神経が蛍光たんぱく質で表示されるマウスと脳画像確認ツールを新たに組み合わせることで神経活動を網羅的に解析する方法を検証した。

具体的には、まず、マウスに6時間の睡眠制限 (6h-SD)を行い、一時的な睡眠不足状態を誘導。6h-SDは「人による睡眠障害(人為的SD)」と「機械による睡眠障害(機械的SD)」の2種類を比較することで、異なるSD法に共通する神経活動変化を探索した。

次に、6h-SD中に活性化神経を現す薬を投与することにより、SD中に活性化した神経を蛍光タンパクにより標識。さらに、固定した脳検体から脳切片を作製し、画像データを取得した。

さらに得られた画像データから活性化神経のxy座標と半自動的に脳領域を決定し、これらの基軸から各脳領域の活性化神経数を計測して評価した。

14脳領域に区分した解析ではどちらのSD法も脳の嗅覚野の反応が増加し、延髄で減少した。348領域に区分すると、いずれも視床下部外側野、中脳の二丘側核と腹側被蓋野などが増え、偏桃体基底外側核前部と線条体の側坐核、中核海馬核などが低下していた。

解析から検出された脳領域のほとんどはすでに報告されている一方で、新規の領域も見出だした。さらに、6h-SDによる領域間の統計的に有意な結合性変化も示された。特に認知機能や情変動への影響が示唆されている。

研究グループは「提案した解析法は脳を丸ごと使わずとも実施でき正当な結果を得られることが最大の利点となる」と評価。「動物愛護の観点からも有用な実験手法としてさまざまな病態モデル解析への応用ができる」とコメントしている。