東京大学の松崎賢史助教らの研究チームは8日、およそ98万年前に強化した冬季モンスーンの影響でティモール海の動物プランクトンの生産パターンが変化したと明らかにしている。地球温暖化による生態系の変化を知るヒントを得られる可能性もある。
本研究ではドイツの研究船「Sonne」航海257及び International Ocean Discovery Program(IODP)による航海363で、サイトU1483で採取された表層堆積と、コアの堆積物中の放散虫化石群集の変化から、地域の夏季表層水温(SST)の変動を復元した。
復元した夏季表層水温は主に夏季モンスーンに制御されていることが判明。また、夏季表層水温と放散虫の絶対量、X線蛍光スキャン元素データの比較から、約98万年前にティモール海で発生した急激な寒冷化は、冬季モンスーンによるものであると考察されている。
また、98万年前までは放散虫の生産性は夏季モンスーンの影響が強い「間氷期」に最も高かったことが分かった。これは、モンスーン降水により河川が増水し、多くの栄養塩が陸から海に運ばれ、放散虫の生産性が増加したためと考えられた。
しかし、98万年前以降の時代には、放散虫の生産性は冬季モンスーンの影響が強い「氷期」の方が高まり、放散虫の生産性のパターンは変化したとされている。
研究チームは「現在より温暖であった時代で生じた全球的な寒冷化によって、どのようにモンスーンとプランクトンの生産性が応答したかについて、いくつかの可能性を提案している」と説明。「地球温暖化に伴う生態系の応答のヒントを提供する可能性がある」としている。