中央大学の髙瀨堅吉教授は、大阪大学の野尻英一准教授と共同研究を実施。自閉スペクトラム症の多岐にわたる症状を包括的に説明しうる中間表現型として「硬直性自律位相連鎖(RAPS)」の存在を理論的に予測したと7日に発表している。
中間表現型とは遺伝子と遺伝子が関与して起こる症状の間に現れる状態。遺伝性がある、測定可能である、精神障害や症状と関連するなどの条件を満たすものをいう。
研究グループは、神経可塑性の基礎理論「ヘッブの理論」を拡張し、単一の知覚・記憶対象の表現に関わる神経細胞の集団(細胞集成体)同士の連絡(位相連鎖)に注目。その結果、RAPSを自閉スペクトラム症の中間表現型として新たに提唱し、同疾患の症状はRAPSの存在を仮定すると説明可能であるとした。
その具体例として、同疾患の患者は1度知覚した対象と類似のものを認識する際に、RAPSが生じて細胞集合体が活動しなくなるために「異なる対象」とされることを例証した。
研究グループは「ASD以外の精神神経疾患もRAPS及びそれから派生した中間表現型を仮定することで、多様な症状を説明可能である」と述べ、「RAPS形成理論を基盤とした研究が進展すれば、治療困難な精神神経疾患の全容解明につながる」と力を込めている。