東北大学の内田就也准教授らは、尾ヒレの運動によって発生する渦を利用して、後の魚が前の魚と尾ヒレの運動を同期させる様子を理論モデルで再現した。協調的な遊泳によってエネルギー消費は低減されることが示された一方、より効率的に泳げる運動パターンが存在することも示されている。エネルギー消費の関係について新たな知見をもたらしている。
提案された遊泳モデルは、尾ヒレを振動板で表した。水の流れからうける揚力と抗力、筋肉から発生する力によって板の角度と魚の重心を変化させて自律的な遊泳を再現した。尾ヒレから発生しる流れは規則的なカルマン渦列として表現されている。
■エネ散逸率は尾ヒレの位相差で変化
このモデルを用いた数値シュミレーションで2匹の魚が、流れを介した相互作用で尾ヒレの運動を変化させる様子を初めてとらえた。前後2匹の魚の尾ヒレ振動が同期して、それらの位相差は前後方向の距離に線形に依存するという作用が再現されたこととなる。
また、前後方向の距離が体長の半分以下の領域でエネルギー散逸率が低減すること、及び2匹の魚は近距離に自発的に引き寄せられることが分かった。さらに、エネルギー散逸率は、尾ヒレの位相差で変化することも判明している。 研究チームは「今回の研究成果は、同期現象とエネルギー消費の関係について新たな知見をもたらすものであり、さまざまな生物の群れや集団的な運動機構におけるエネルギー効率について研究が加速するだろう」としている。