文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
中脳皮質系の準備活動は「力の強さと関係する」 都医学総合研研究員が初発見

東京都医学総合研究所(TMiMS)の菅原翔主席研究員らは、自然科学研究機構と共同で行った研究により「中脳皮質系の準備活動は意欲が高まった状況での反応開始ではなく力の強さと関連する」と発表した。

研究では、短距離走を模し「よーい、ドン」で素早く握力計を握る行動課題を作成。意欲と運動パフォーマンスを繋ぐ脳領域を調べる分析を、人を対象に実施した。参加者の意欲水準と発揮された力の関連性を評価するため、素早い反応に対して与えられる賞金額(500円・50円・0円)を「よーい」のタイミングで伝え、直後に素早く握ってもらった。

その結果、これまでの研究で示されてきた通り、期待する賞金額が大きいほど握る反応時間は速くなった。一方で、素早く握ることしか求めてないにも関わらず、握力も賞金額が大きいほど強くなった。この結果は反応の速さと力を出す度合いの制御は独立した神経メカニズムがあることを示唆している。

このような、意欲水準で左右される運動の神経メカニズムを明らかにするために、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で脳活動を計測。その結果、「よーい」のタイミングでの意欲を司る腹側中脳と運動の実行を司る1次運動野などの運動関連領域の活動は、期待する賞金額が大きいほど強くなっており、この中脳と皮質をつなぐ中脳皮質系の活動は意欲水準を反映していることが分かった。

■「よーい」と「ドン」の運動関係を調査

次に、運動パフォーマンスを説明できる脳領域を明らかにするために、「よーい」のタイミングで生じるこれらの運動準備活動と、その後の「ドン」のタイミングで発揮される運動がどのような関係にあるかを調べた。結果として、運動を実行する前の準備状態での1次運動野の活動は反応の速さと力強さに関わる一方、腹側中脳は強さとだけ結び付くことが分かった。

これまで、多くの研究が意欲と腹側中脳活動と関連性を示しており、その意欲の指標として反応の速さを用いていた。しかし、研究から速さは意欲水準と関連していたけれども、腹側中脳の活動とは関係がないと明らかになった。

一方で、研究では腹側中脳と1次運動野を結ぶ中脳皮質系の活動は意欲水準とは直接関係がない力強さと密接に関係することを初めて発見した。

研究グループは「研究で得られた知見は、運動パフォーマンス向上を目的とするスポーツ選手の競技力向上を目的としたメンタルトレーニングの提案につながる」とし、「活動したいという意欲が低下してしまう気分障害や気分障害と運動障害を併発するパーキンソン病での症状理解や新たな治療戦略の開発につながることが期待できる」と説明した。