北海道大学の澤辺智雄教授と北海道立総合研究機構水産研究本部の酒井勇一主任主査らの研究グループは、ナマコの一種である「マナマコ」の成長初期に高頻度で見いだされるコア微生物を、メタゲノム技術を用いて明らかにするとともに、コア微生物の中からマナマコの成長を促す新たな海洋細菌を発見した。
マナマコは成長が遅く、そのスピードの格差や減少はマナマコの安定生産に向けて改善しなければならない課題となっている。ここ数年、乱獲などにより、天然資源が減少。酒井主任らの尽力で、マナマコの種苗生産技術が開発され、全国に普及しているが、経済効果が生産コストに見合っていないことが、同氏の調査により明らかとなっている。
研究ではマナマコの受精卵を育てる実験を3年間実施。すると、成長初期に高頻度で現れる4種の微生物が発見された。そのうち1種は胞胚から分離して成長を促す効果がある「スルフィトバクタ―属細菌」であると判明した。
研究チームは「今後はこの細菌がマナマコ宿主におけるプロバイオティクスとして作用する機序を明らかにするとともに、マナマコ種苗生産現場で応用するための条件を見つける必要がある」とコメントしている。