茨城大学農学部附属国際フィールド農学センターの小松﨑将一教授ら国際研究グループが行った放射性セシウム(137Cs)の農耕地での動態に関する調査により、農耕地の放射性セシウムは、土壌中での溶脱や作物吸収による移動は100年間にわたりごく僅かであることが明らかとなった。自然崩壊に伴い農耕地中での存在量は減少し、長期的に作物中の137Cs濃度は現状よりもさらに低下していくことが示された。
2011年の福島第一原発事故以降の放射性セシウム(137Cs)の農耕地での動態に関する数理モデルを作成し、100年間にわたる長期的な影響評価を行ったもの。調査には、小松崎教授をはじめ中国、フランスの研究者らが参画した。
農耕地における放射性物質の今後100年間にわたる長期的な環境動態について明らかにしたもので、原子力発電所事故後における農産物の安全性確保について科学的根拠をあたえるための貴重な示唆を提供するものといえる。
■長期間のセシウム挙動を高く予測
小松﨑教授らは、「この研究から得られたデータは、長期間にわたり農地での放射性セシウムの挙動を信頼性高く予測しているものであり、国際的にも非常に貴重なものです。これは、将来の農業管理方法の検討や、放射性セシウムの長期的な変動予測の上で大いに役立つ」と意義を強調した。
一方で、「今後、農産物の放射性セシウム濃度をより広域的に予測するためには、土壌の種類による放射性セシウムの蓄積量や変動幅などを考慮する必要があります。したがって、後もモニタリングと研究を継続していくことが不可欠」とも話している。