文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
野ネズミを介してササの一斉結実が樹木間の競争関係を変える? 名大研究Gが野ネズミの食の好みから新見解

名古屋大学の梶村恒教授らの研究グループは10月31日、森林に生息する主な種子食者である野ネズミが、ササの種子をほかの樹木の種子よりも選好する、また逆にクリ、シロモジよりは選好しないことを実証した。樹木間の競争関係に変化を生じさせているとしている。

研究ではササと樹木の種子を同時に供試する野外実験を行った。供試方法として、スズタケと樹木(1種)の種子を浅い網籠に一定量入れて訪れる動物に自由に選択させた。種子は同じ森林にあるクリ、ミズナラ、ブナ、シロモジの4種類。その様子がモニタリングできるようにセンサー式自動撮影カメラを設置した。

樹木種子の大部分は持ち去られたが、スズタケは頻繁に捕食された。これらの採餌方法の違いは大型の種子を貯食するという野ネズミの行動原理に起因するものと考えられる。

種子の設置から一晩後に減少した数量に基づいて、採餌率を計算した。その平均値はクリが100%と最多。ミズナラが8.8%と最低であった。

■クリ100%、ブナ16%

食べられた種子の順番について2つの指標を用いた。一つめは「一番初めに訪れた野ネズミがスズタケと樹木の種子のどちらを選択したか」。その確率を比べると、スズタケとクリでは、クリが100%、シロモジとの場合はシロモジが71%、ブナが16%、ミズナラは10%だった。

2点目は「スズタケと樹木の種子のどちらか一方が、全てなくなるまであるいは供試終了までの間で先に選択された採餌回数」。全体に占める各種子の割合を算出した。こちらも1点目と同じ傾向であったが、シロモジの場合は逆の傾向が見られた。

研究グループは「ササ種子の一斉結実の際に樹木側がどのような影響を受けるかを紐解く鍵になる」と説明している。