文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
ウイルスの「伝播リスクの見える化」に成功 感染症の早期発見などに貢献の可能性(産総研)

産業技術総合研究所(産総研)の福田隆史研究チーム長らのグループは、茨城県と共同で県内の畜産農場でエアロゾル捕集実験を行った。空間を漂うウイルスを検出し、隣接する畜舎の付近まで拡散したウイルスを検出できることを実証している。感染症の早期発見などにつながりそうだ。

2022〜23年度の鳥インフルエンザや豚熱の発生など、日本国内でも畜産業に大きな打撃を与える感染症の発生が相次いでいる。家畜感染症の被害を食い止めるため、産総研で開発してきたウイルス検出手法を現場に適用するための技術開発を行い、その検証をした。

産総研はこの研究では、効果的な濃縮や検出阻害物の除去を行うサンプル前処理手法「PTAS法」を開発。畜産現場でのウイルス検出にこの方法が有効であると示した。

また茨城県内の農場で、牛呼吸器病症候群の原因ウイルス7種の検出実験を実施。風向きに応じた頻度で検出するとともに隣接する牛舎前でも探し出したことから、ウイルスの空気分布の推定により「伝播リスクの見える化」ができるようになった。

研究グループは「従来ほとんど試みられていなかった畜舎内外の気中捕集試料からの希薄なウイルス検出技術基盤が確立できたことから、感染症発生の早期察知や拡大防止に有効な手段として活用できる見通しがついた」と説明している。