文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
牛乳アレルギーの経口免疫療法と腸内環境の関連性調査 細菌の量が免疫獲得に寄与(理研)

理化学研究所(理研)の大野博司チームリーダーらの研究グループは1日、小児の牛乳アレルギーを、牛乳を摂取して改善していく経口免疫療法において、便中の細菌群が多いことがアレルギー反応の抑制維持と関連することを明らかにしたと発表した。これは新たな療法の開発に寄与する可能性もある。

牛乳アレルギーは小児の一般的なアレルギーの1つ。自然に治る可能性があるが、そうでない場合は牛乳を飲むことを避け続けなければならない。近年の研究では、食物アレルギーに対する腸内環境の重要性が指摘されているため、研究グループは牛乳アレルギーと腸内の関連性を調べた。

研究ではアレルギーを持つ5~15歳の小児32人を対象に経口免疫療法と腸内環境要因、免疫獲得との関連性を評価した。

まず、経口免疫療法の評価を実施。実行した32人のうち、4人が重篤な副作用を起こし、28人が13カ月間の治療を終えた。治療中はアレルギーが改善していたが、2週間後に耐性を調査したところ免疫を獲得していたのは7人であった。

続いて、治療中における腸内環境を分析した。すると、腸内細菌や物質の構成は大きく変動しており、それは特に初期治療に大きいことが分かっている。

臨床と腸内環境因子のうち、経口免疫療法の免疫獲得に関連する要因を調査すると、臨床因子ではアトピー性皮膚炎と喘息の治療をあわせて受けていると免疫獲得率が低いことが分かった。腸内環境では、細菌の豊富さと免疫の獲得が関連していると判明している。

研究グループは「経口免疫療法が免疫環境を誘導するメカニズムの解明や腸内細菌をターゲットとした併用療法の開発に貢献できる」としている。