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QST研究チーム 宇宙核時計として利用できるルテシウムの新たな計測方法を生み出す

量子科学技術研究開発機構(QST)などの早川岳人上席研究員らの研究チームは、宇宙核時計の1つである放射性同位体ルテシウム176(¹⁷⁶Lu)の最も正確な値を新しい実験方法で計測した。これにより過去に測定された半減期が矛盾しているという問題を解決した。ルテシウム176が宇宙核時計として使用されることが期待されている。

ルテシウム176は半分に崩壊する時間(半減期)が約400億年かかる長寿命放射性同位体の1つであり、その親核と娘核の数の比から宇宙的な年代を測定する手段となる。だが、これまで20以上のグループによって半減期が計測されたが、その値は互いに大きく違っていたため、正確な時間が分からないという問題があった。

研究グループは新しい測定法を発案した。この手法では、放射線検出器を構成するシンチレーション結晶の内部にルテシウム試料を入れて、放出される放射線の全エネルギーを計測する。

ベータ崩壊が発生した場合、必ずガンマ線やベータ線としてエネルギーが放出されるため、計測した放射線の数がベータ崩壊の数にほぼ等しい。そのため、放射線の数からベータ崩壊の数への校正を行う必要がないという利点がある。この方法はこれまでの実験の問題点を解決した手法であり。この結果は過去の実験で計測された値より、真実の数値に最も近い。

研究チームは「信頼の高い値が得られたため、ルテシウム176が今後宇宙核時計として使用されることが期待される」とし「太陽系形成以前に発生した超新星爆発の年台測定への適用もできる」と説明している。