熊本大学の丸山徹教授らの研究グループは、京都薬科大学などとの共同研究により細胞内の還元環境に応答して薬物を放出する新規「アルブミンナノ粒子製剤」の開発にはじめて成功した。今後、脳梗塞治療などに利用される可能性もある。
血清中に多く存在するたんぱく質「ヒト血清アルブミン(HSA)」のナノ粒子化は高濃度の難水溶性薬物を搭載できる利点がある反面、生体内での環境応答性を欠くためにスマートな薬物送達システムで求められる臓器への標的能や細胞内での薬物放出制御機構を有していない。
この課題を克服すべく、研究グループはHSAが有する17対の分子内ジスルフィド結合(S-S)に着目。具体的には、HSAが有する17対の分子内ジスルフィド結合を還元剤で切断した後、分子間でジスルフィド結合を再架橋させる。そうすることで、血中では安定に存在し、細胞内において粒子が崩壊する新たなHSAナノ粒子を作製することに成功した。
研究グループは「今後は、本ナノ粒子を利用した脳梗塞治療などへの応用が期待される」としている。