そっくりな2種のコウモリはどうやって共存しているのか?。東京農工大学の髙田隼人特任准教授らの研究チームは南アルプス山麓においてキクガシラコウモリ(キク)とコキクガシラコウモリ(コギク)を対象に糞分析による食性調査を実施し、2種の食物をめぐる種間関係を解明した。
コウモリは体サイズの大きい種ほど強いあごの力を持ち、体サイズの小さい種ほど小回りの利く飛翔が得意。これらの違いにより類似する種間でも食性に違いが生じる可能性がある。そこで、研究では同じ場所に生息する2種の食性を評価し、食物をめぐる種間関係を検討した。
研究グループは南アルプス山麓において調査を実施。調査地ではキクとコキクの日中のねぐらを人家と隧道で発見しており、コウモリがよく休息する場所の下にプラスチックのトレーを設置した。このねぐらを毎月訪れ、トレーにある新鮮な糞を採取した。2015年4月~2016年1月までの期間に、計161個と143個の糞サンプルを採取している。
糞は実験室に持ち帰り、実体顕微鏡を用いてその中から出てくる触覚や羽、脚、顎などの破片から餌動物を特定した。キクの主食は硬い甲虫類が中心であったのに対し、コキクはハエやアミメカゲロウなどであり2種の食性は異なった。これらのことから、キクは飛んでいる虫を空中で食べている一方で、コキクは静止している虫を採っていると推察される。
これらのことから、体の違いが食性の違いをもたらしているという。研究グループは「食性や採餌習性が明らかになっているのはまだほんの一部分に過ぎない。森林生態系の保全のためには今後も知見を積み重ねていく必要がある」と話している。