理化学研究所(理研)の小林玄器主任研究員らの共同研究グループは、負の電荷を持つ水素「ヒドリドイオン(H-)」が固体内を拡散するイオン導電体(H-導電体)の研究から、室温で固体電解質として作動する新材料の開発に成功した。H-導電現象でファラデー現象がはじめて100%に達している。
研究グループは同物質のランタン(La)の一部を電気陰性度の低いストロンチウム(Sr)に置換したH-導電体Sr-LaH3-δを合成した。それを固体電解質に用いた全固体型の電気化学セルを構築して室温で定電流放電試験を実施した結果、電極に用いたチタン(Ti)を二水素化チタン(TiH2)まで完全に水素化させることに成功している。
注目すべきは、その電気化学反応のファラデー効率がほぼ100%に達した点。これはH-導電現象を用いたデバイス開発ではじめてのことであり、今後の応用研究の可能性を広げる成果であるという。
研究グループは「導電率のさらなる向上と電圧に対する安定性確保を目指すとともに、電極との界面設計などの技術的な課題にも挑戦していく」とコメントした。