理化学研究所(理研)の関田愛子研究員らのグループは、アトピー性皮膚炎患者の複数の形質に関わる病態の違いを発見した。寛解や増悪に遺伝子発現変動パターンが関連することなどを突き止めている。
共同研究グループは、アトピー性皮膚炎患者115人と健常者14人の皮膚組織および血液の遺伝子発現を解析。アトピー性皮膚炎に特徴的な皮疹性状に関わる遺伝子発現パターンを詳しく調べた。紅斑(こうはん)と丘疹(きゅうしん)という皮疹性状に着目して遺伝子発現との関係性を分析した。
その結果、ひとくくりにされてきた皮膚症状の根底には異なる病態が関わっていることが判明している。さらに、30人の患者について、1年間にわたる血液の時系列データを解析。患者ごとの寛解や増悪といった病勢と遺伝子発現変動パターンが関連すること、また、これが患者の治療履歴を反映していることを示した。
研究グループは「より広範囲の臨床情報および生体分子の網羅的情報を統合し解析することで、患者の多様性およびアトピー性皮膚炎のエンドタイプについて理解を深めるとともに、各患者の治療標的の同定を通して個別化医療の実践につなげることが期待できる」としている。