宮崎大学と九州大学の研究チームは、宮崎と熊本県にまたがる九州脊梁山地における土壌侵食が、森林内の土壌微生物相を変化させていることを明らかにした。研究データは土壌の微生物の挙動解明などにつながるとしている。
地表面の土壌が流れ出る「土壌侵食」が樹木の根っこを露出させて、土壌中の有機物量を低下させていることが先行研究で分かっている。採取した土からDNAを抽出して微生物の群集組成を解析し、浸食と関連のある指標との関係性を解析した。
3つのエリアで土壌中の微生物と真菌相を解析し、それら群集組成を調べたところ、サンプルの群集が土壌侵食によって影響を受けていることが分かった。サンプル同士の要素がどれだけ似ているかを示す指標を算出し、それをもとに2次元平面上に図を描くとサンプルが大きくばらついて分布していた。
根の露出度合いに沿って解析すると、原核生物では貧栄養な土でも生きることができる分類や深いところに多い種類の割合が増えていることが分かっている。真菌類では露出度合いによって植物病原性や腐食性の真菌類の相対的な存在量が増加していた。
また、共生性の真菌類のうち、外生菌根菌の相対存在量が土壌の腐食中の有機物含量の低下に伴って低下していることも分かっている。
研究グループは「今後も同調審査や周辺の微生物相のデータを蓄積することで、森林内の微生物相の変化の解明、そして森林内の微生物相の挙動解明や生態系内での役割の解明、それらの将来予測などに期待ができる」としている。