横浜市立大学の塚本俊一郎医師らの研究グループは、内臓脂肪型肥満の発症に関する免疫細胞を介した新規メカニズムを解明した。免疫細胞ATRAPは肥満のバイオマーカーなどとして応用できる可能性が期待されている。
研究グループはこれまでATRAPの研究をしてきた。それによると、ATRAPの発現異常が高血圧などと関連することが分かっている。しかし、肥満状態におけるATRAPの機能は解明されておらず、それについて調査した。
野生型マウスに高脂肪食を与えて肥満にしたところ、肥満の初期段階で白血球中のATRAP発現が増加することが分かった。次に、骨髄移植によって骨髄のATRAPを欠損させたマウスを作成し、高脂肪食を与えたところ骨髄野生型キメラマウスと比べて、内臓脂肪の減少、インスリン抵抗性の改善、脂肪組織の代車環境の改善が認められた。
そこで脂肪組織を調べたところ、キメラマウスの脂肪組織ではM2(CD206+)マクロファージが減っており、関連するTGF-β経路の増加は脂肪組織の拡大やインスリン抵抗性を悪化させることが別の研究で報告されており、これらの効果がキメラマウスの抗肥満効果につながっていたとも考えられる。
また、キメラマウスでは単球レベルでの遺伝子環境の変化が最終的に内蔵脂肪の軽減などに寄与していると考えられた。
研究チームは「内臓脂肪型肥満の発症に免疫細胞ATRAPが重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに免疫細胞中のATRAPの発現は、内臓脂肪型肥満のバイオマーカーやサロゲートマーカーとして応用できる可能性が期待されている」と説明している。
世界的に深刻な問題となっている肥満症の拡大において、免疫細胞ATRAPの発現制御は内臓脂肪型肥満の新たな治療標的となる可能性もあり、将来的な治療法の開発に繋がることが期待される。