奈良先端科学技術大学院大学の中島敬二教授の研究グループは、植物の根の成長を駆動する数百個の細胞の振る舞いを精密に計測して得られた数値データを統合して人間が直感的に解釈できる形式で提示する技術を開発した。研究に関する、人と機械が協働する研究方法に大きな道が拓けている。
この技術は、根の先端を自動的に追尾し時間の経過を含めた4次元の細胞動態を記録する顕微鏡システム、人工知能を用いて画像情報を数値データに変換するプログラム、複雑な数値データを人間の視覚や聴覚に適した形式で提示する人間拡張工学の融合により実現したものだという。
研究チームはツールを駆使し、シロイヌナズナの根端における細胞分裂と伸長の動態に関して、これまで見過ごされてきた特徴を見出した。皮層の細胞は分裂領域で5回連続して分裂、その数を約30倍に増やしていた。
分裂領域の最先端部の細胞は約30時間という極端に遅い周期で分裂していたのに対し、中間領域の細胞は約12時間という高い速度で同調的に分裂していた。さらに、同調的な分裂で生み出された細胞群が一斉に分離を停止することで、同じサイズをもつ細胞からなる集団が生み出さる。その後、各集団が根のさらに基部側の領域で伸長を始めることで、根の成長を駆動していることが明らかとなった。
研究チームは、膨大な画像の取得と定量化を機械化し、得られた情報を研究者がその知識や経験に基づいて解釈する「人機協働」の研究方法の道を指摘。「ここで開発された手法は根の成長を駆動する細胞レベルの制御機構を解明するための重要な基盤となる」としている。