理化学研究所(理研)の侯召民主任研究員らの国際共同研究チームは、多金属のチタンヒドリド化合物を用いて、非常に安定な窒素分子(N2)と不飽和カルボニル化合物から、温和な反応条件でヒドラジン誘導体を合成することに成功した。
窒素分子は入手容易な天然資源だが、非常に安定しており、有機合成に直接利用することは困難。国際共同研究チームは、独自に開発したチタンヒドリド化合物を用いることで、温和な条件で窒素分子のN≡N結合を還元し、さらにα,β-不飽和カルボニル化合物を付加させることで、新たに窒素-炭素結合を形成させ、有機ヒドラジン誘導体を合成した。
また、X線結晶構造解析や分光学的手法、計算科学により、分子レベルで反応プロセスを明らかにしている。
研究グループは「このような多金属ヒドリド化合物に加え、窒素分子と不飽和カルボニル化合物などの多様な不飽和炭化水素類を用いた含窒素有機物の合成研究が進展することで、不活性分子の切断を鍵とする新しい物質変換反応への展開が期待できる」としている。