理化学研究所(理研)の井上伊知郎研究員らの国際共同研究グループは、高いX線強度の下では物質によるX線の回折現象が抑制されて、回折強度が入射したX線強度に比例しなくなる「非線形性」が発現することを発見した。この成果は、X線の時間幅の自在な制御を可能にする「非線形光学素子」への応用が期待されるという。
国際共同研究グループは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」においてさまざまなX線強度の下でシリコンからの回折現象を測定した。その結果、ある強度(1019W/平方センチメートル)を超えると、X線照射開始からわずか数フェムト秒(1フェムト秒は1000兆分の1秒)の間に物質中の原子のイオン化が進行することで、回折強度が減少することを見出した。
研究グループは「物質による回折現象はさまざまなX線光学素子の動作原理として用いられている。今回発見された回折現象の非線形性を利用することで、未開拓であったX線領域の非線形光学素子が実現可能になると考えられる」と説明している。