物質・材料研究機構(NIMS)などからなる研究チームは、真空や窒素雰囲気を扱う特別な設備を用いずに、有機半導体を水溶液中で精密にドーピングする基盤技術を世界で初めて開発した。この技術は、これまで見過ごされてきた水を利用するというパラダイムシフトだという。このケースでの「ドーピング」とは、半導体中に電導性を担う電荷や、電荷のバランスをとるための物質を導入するプロセスを指す。
研究チームは、大気下・水溶液中でのベンゾキノンとヒドロキノンの酸化還元反応を利用した化学ドーピング技術を開発した。この反応は酸性度によって調節される。有機半導体薄膜をベンゾキノン、ヒドロキノンと疎水性陰イオンの水溶液に浸したところ、化学ドーピングが生じたと公表。ドーピング・レベルは水溶液のpHによって変化し、電気伝導度は約5桁の広範囲にわたって正確に制御されたとしている。
研究チームは「この技術はセンサー、電子回路、太陽電池、ディスプレイなど様々な有機半導体フレキシブルデバイスの産業応用を飛躍的に促進すると考えられる。また、pHやイオン濃度を計測する薄膜型の有機半導体センサーなど、ヘルスケア、バイオセンシング技術への貢献も期できる」としている。