東京工業大学の三宮工准教授らの研究グループは17日、加速電子と電子線励起発光「カソードルミネセンス」による光子の時間相関により、電子を励起パルスとして利用することで、ナノスケールでの物質の発光寿命計測に成功したと発表した。発光ダイナミクスの観察や、異粒子間のもつれを利用した量子技術などへの応用が期待されている。
今回新たに開発した電子−光子相関電子顕微鏡法により、光の回折限界をはるかに上回る電子線分解能での発光ダイナミクス観察だけでなく、加速電子と放出光子の量子もつれの効果を抽出できる相関パラメタの評価も可能となった。
この手法は、標準的な電子源から放出された電子をパルスとして利用するため、大掛かりな装置が必要なく、通常の電子顕微鏡の電子線源をそのまま利用できる。
研究グループは「研究で得られたコヒーレントな光子生成過程における電子-光子ペアの相関はエネルギー、運動量、位相関係が保存される異粒子間の量子もつれの検出に向けた第一歩であり、発光プロセスの解明や量子光源評価を可能とする新規な電子顕微鏡技術の実現につながるかもしれない」と説明している。